貧しさを覆う2011年12月15日 10時24分02秒

葬列
悲しみを押し込めて、地元の住民たちは田畑をつぶし、さらには先祖の眠る墓地まで脇に追い立てて碑を建てました。そこに祈られたのは過去への鎮魂と謝罪のことばでした。そして、その上を高速道路がはしるのです。すぐそばの、山に続く永代の願いは神の奉られたこの地方の一大神社にこめられました。けれども、その怒りはいずれこの地に振り下ろされることでしょう。

実際に、写真でおわかりのように、貧しい土地と人々の弱さや情けなさ、そしてその心の愚かしさをお金で覆うかのようなコンクリートの橋脚の列が居並ぶのです。これで、この扇状地の景観は台無しです。その上の集落からはもう海は見えなくなるのです。組み込まれた道路網の恩恵は素通りです。アクセスの少しの不便さこそ、泊まりの観光の第一ステップだったはずなのに。

便利さ、容易さと引き替えにどれほどのものを失うのでしょうか。一目瞭然だと誰もがわかっていて、それでも誰も止めようとはしませんでした。誰も、大声で反対を叫ぶことどころか、こぞってその早期建設を表立って求め、その際のお金をいただいたのでした。インターチェンジを造ったところで、破壊は破壊でしかありません。生き物たちもまた、追いやられ、命は絶たれます。命も明日を奪うのは、なんでもない、人々の心なのです。

コメント

コメントをどうぞ

※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。

※なお、送られたコメントはブログの管理者が確認するまで公開されません。

※投稿には管理者が設定した質問に答える必要があります。

名前:
メールアドレス:
URL:
次の質問に答えてください:
「山路を登りながら、こう考えた。」で始まる小説の作者は誰か。

コメント:

トラックバック

このエントリのトラックバックURL: http://midori.asablo.jp/blog/2011/12/15/6244798/tb

※なお、送られたトラックバックはブログの管理者が確認するまで公開されません。